「社労士＆行政書士が最強説」を検証してみた

社労士や行政書士は最強なのかを知りたい人に向けて、ダブルライセンスの年収やどっちが稼げるか、受験や科目の免除、どっちが難しいか、今後の動向や需要、将来性、取得の順番までをやさしく整理します。

社労士より行政書士の方が難しいですか？や士業で最強なのは？といった疑問、社労士と行政書士のダブルライセンスを取得するとどうなる？の実務目線、さらに社労士は無理ゲーですか？という不安にも、公開データや公的機関の案内をもとに客観的にまとめます。

社労士＆行政書士最強説を検証

ダブルライセンス年収の相場

収入を見通すには、まず稼ぎ方の土台を分解するのが近道です。

実務では働き方（勤務・独立）、案件構成（顧問・単発）、地域市場（企業数や産業の分布）の三つが年収のブレを生みます。

社労士は就業規則整備や社会保険手続、労務相談の顧問契約など、毎月定額の対価になりやすいメニューが多く、積み上げ型の売上を作りやすい特徴があります。

行政書士は建設業や産廃、飲食、運送といった許認可の申請、契約書や議事録の作成、内容証明など、スポット案件で高単価を狙える分野が広く、月ごとの売上の波はあるものの、案件あたりの粗利を高めやすいという構造が一般的に認識されています。

ダブルライセンスの年収を考えるとき、単純に「足し算」ではなくクロスセル（関連提案）とLTV（顧客生涯価値）の観点が重要です。

例えば会社設立や業種転換で許認可が必要なクライアントに対し、行政書士としての手続を起点に、労務管理体制の整備や助成金申請、就業規則や評価制度の設計など社労士の継続メニューへ接続できます。

逆に、社労士顧問からスタートした企業で、事業拡大に伴う許認可追加や契約書整備の需要が出れば行政書士として単発高単価を受注できます。

この循環ができると、売上の安定性（顧問）と伸びしろ（単発高単価）の両立が進みやすくなります。

年収の相場は、母集団や調査方法で差が出ます。

開業年数、従業員数、外注の使い方、単価設計、案件の専門性（例えば建設業許可の更新比率が高いか、在留資格など語学対応が必要か）などでばらつくため、ひとつの数字に依存せず複数の一次情報を突き合わせる姿勢が欠かせません。

公的団体の実態調査や統計は、サンプルの属性と集計方法が明記されており、比較時の基準点として有用です。

ダブルライセンスでは、年間売上の内訳を「継続顧問」「許認可・契約」「研修・コンサル」「助成金・補助金」「その他」に分け、月次で割合と粗利をトラッキングすると、値下げ交渉への耐性や繁忙期の人員配置が設計しやすくなります。

要点：ダブルライセンスは顧問収入（社労士）と許認可等の単発高単価（行政書士）を組み合わせることで、季節変動や景気による落ち込みを相殺しやすいポートフォリオを作れるのが強みです。さらに、クロスセル設計とLTV管理を導入すると収益の再現性が上がります。

観点	社労士	行政書士
主な収益源	顧問料・手続代行・就業規則・相談	許認可申請・契約書・各種申請・文書作成
収益の特性	継続性が高く積み上げ型	単発高単価で波が出やすい
拡張の起点	労務体制整備→許認可・契約へ	許認可→労務顧問・助成金へ
指標設計	月次MRR・解約率・工数比	平均単価・獲得コスト・回収期間

年収を押し上げる現実的なレバーは、以下の通りです。

1. 専門領域の明確化（建設・運送・医療介護など）
2. 標準化テンプレートとチェックリストによる処理速度の平準化
3. 紹介導線（士業連携や同業コミュニティ）とウェブ経由のリード獲得
4. 単価改定のルール化（スコープ増減・法改正対応・緊急対応の係数化）

これらは個人の経験に頼らずとも、公開されている業務フローや手続要領、報酬統計の範囲内で設計可能です。

なお、年収を語る際は税引後と経費計上前後の違いにも注意が必要です。特に独立の場合、外注や人件費、ITツール費、会費、保険、賃料、広告費などで粗利率は大きく変わります。

（出典：全国社会保険労務士会連合会「社労士に関する実態調査 詳細」）

どっちが稼げるを検証

稼ぎやすさは「資格そのもの」よりも「市場選択と提供価値」で決まります。

社労士は従業員数が多い地域や製造・医療・ITなど継続的な労務課題が発生する産業で強みが出やすく、行政書士は建設業や運送業、飲食業など許認可の更新や追加が定常的に発生する市場で機会が多く生まれます。

つまり、同じスキルでもターゲット業界が変われば、案件量と受注単価、決裁スピードが大きく変化します。

マーケティング面では、社労士は「労務監査→是正→顧問化」という動線が組みやすく、行政書士は「新規事業や拠点拡大→許認可→補正対応」という動線で単価を取りやすい設計です。

収入の源泉をもう一段分解すると、

①新規リード獲得数、②商談化率、③受注単価、④継続率（社労士）、⑤リピート率（行政書士）、⑥紹介率、という営業ファネルの各指標を最適化することが、最終的な年収に直結します。

例えば、社労士はストック型のため解約率を1％下げるだけで年間売上の下支えが効き、行政書士はアッパー単価の交渉余地が大きいため、スコープと納期の明確化で粗利率が改善します。

ダブルライセンスでは、見積り時に「許認可＋労務体制の初期整備」のセットプランを提示し、納期短縮と窓口一本化のメリットを明確化すると、価格以外の比較要因を作れます。

なお、どっちが稼げるかの議論で見落とされがちな論点が、人時生産性（1人1時間あたり粗利）です。

案件単価が高くても、調査・補正・差し戻し対応で時間がかかれば、生産性は下がります。逆に、単価が中程度でも、定型化と自動化により高速で回せれば、人時生産性は上がります。

チェックリストとスクリプト（RPAやマクロ）での反復作業の短縮、クラウドストレージのタグ設計、テンプレートのバージョン管理など、仕組み化の効果は年収に直結します。

さらに、士業連携（弁護士、税理士、司法書士、行政書士・社労士間の相互送客）を制度化すると、広告費を抑えつつ高確度の紹介が入りやすくなり、安定的な受注と単価の維持につながります。

年収比較のグラフや平均値は、母集団の構成（開業年数・地域・従業員数）で結果が大きく変わります。

単一の平均値だけで判断せず、中央値・分位点・サンプルサイズ・調査年を必ず確認してください。

見込みの試算を行う際は、「案件単価×月間件数×粗利率−固定費」という形で自分の条件に当てはめると現実的なレンジが見えます。

評価軸	社労士（ストック型）	行政書士（フロー型）
収益ドライバー	継続顧問・労務相談・規程整備	許認可・契約書・各種申請
伸ばし方	解約率低下・顧問単価の再設計	高難度領域特化・短納期プレミアム
主要KPI	MRR、LTV、NPS、対応SLA	平均単価、受注率、回収期間
自動化余地	年次更新・算定・月変の定型処理	定型様式の差分管理と書式生成

まとめると、稼ぎやすさは「どちらが優れているか」という二択ではなく、対象業界における課題密度と、業務の標準化度合い、そして案件導線の設計に左右されます。

ダブルライセンスはこの三点を同時に最適化しやすい点が実務上の優位性であり、最強を目指すなら市場選定×提案設計×運用設計の三層で戦略を組むことが現実的です。

受験や科目の免除整理

試験制度は学習計画とキャリア設計の根幹です。

社労士は受験資格があり、一般に①学歴（大学・短大卒等）、②実務経験（一定の年数）、③厚生労働大臣が認める国家試験の合格、のいずれかに該当する必要があります。

行政書士は年齢や学歴の制限は設けられておらず、誰でも受験できます。

ここで注目したいのは、学歴要件を満たさない人でも、先に行政書士に合格すれば社労士の受験資格に到達しうるというルートがある点です。

学歴や職歴の事情から社労士を目指しにくい場合でも、順番を工夫することで最短ルートを描けます。

社労士には科目免除の仕組みが存在します。

例えば、公務員として所定の職務に従事した期間がある場合や、免除指定講習を修了した場合など、条件を満たせば一部科目が免除されます。

免除は学習負担を下げるだけでなく、選択式の基準点での取りこぼしリスクを抑える効果が期待できます。

ただし、免除の可否・対象科目・証明書類・申請期限などの要件は毎年の試験案内で明示されるため、最新の公式情報を確認してから計画に組み込むことが不可欠です。

行政書士には、社労士のような制度的な科目免除は一般的に案内されていませんが、学習上の「実質免除」に近い発想は可能です。

たとえば法学部出身で民法・行政法の基礎が固い受験者は、一般知識（政治・経済・情報）の強化に学習資源を集中させる、といった配分の最適化です。

両試験を横断して学ぶ場合は、条文系（条文の素読・定義整理）と判例系（趣旨・射程の理解）の時間を分け、過去問の設問を「条文・判例・数値（時効や日数）」のラベルで分類しておくと、重複学習を削減できます。

項目	社労士	行政書士
受験資格	学歴・実務・他国家試験合格のいずれか	制限なし（誰でも受験可）
科目免除	公務員特例・免除指定講習 等	制度上の科目免除の一般案内は少ない
活用の勘所	基準点リスクの回避と学習集中	配点の高い法令系に学習資源集中
横断学習	労基・社保の条文系を固める	民法・行政法の判例趣旨を整理

用語解説：
基準点…社労士や行政書士で設定される最低得点ライン。総得点が合格点を超えても、科目別基準点を下回ると不合格になる仕組み。
免除指定講習…所定のカリキュラムを修了すると、申請により一部科目の免除が認められる制度。年度の実施要領で条件や手続が示されるため、最新情報の確認が必要です。

学習の現実的な手順としては、（1）自身の受験資格を確認、（2）免除の可能性を精査、（3）本試験の出題ウェイトと自分の得手不得手を突き合わせ、（4）直近3〜5年分の過去問から予備校等の科目別講義へ戻す「逆算設計」をとると、ムダ打ちが減ります。

とくにダブルライセンスを視野に入れる場合、先に行政書士で法令の全体地図を作り、その地図の一部を社労士で掘り下げると、学習の重複が減り、インプットとアウトプットの往復が滑らかになります。

どっちが難しいのか

難易度を比較するには、表面的な合格率の高低だけで判断せず、試験設計のクセや採点方法、科目間の相関、出題形式の違いまで丁寧に分解する必要があります。

まず社労士は、選択式と択一式の二本立てで、さらに科目別基準点が設定されます。

総得点が合格点を上回っても、どれか一科目が基準点に届かないと不合格になるため、得点の凸凹を許さないバランス要求型の試験です。

一方の行政書士は、法令等と一般知識に配点が分かれ、択一式に加えて40字程度の記述式が課されます。

ここでは条文知識の再現に加え、事例を法的三段論法に沿ってコンパクトに要約する記述力が測られます。

形式の違いは学習戦略に直結し、社労士では「頻出科目の確実化＋苦手分野の基準点死守」、行政書士では「高配点の法令で土台を作り、記述で取りこぼさない」方針が定石になります。

難易度をさらに押し上げる要因が、出題範囲の性質です。

社労士は労働基準法、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険、国民年金など、労働・社会保険の横断で枝葉の数値（待機期間、時効、給付率、標準報酬の端数処理など）が多く、改正も頻繁に発生します。

改正点のフォローを怠ると、過去問の焼き直しに見える問題でも落とします。

行政書士は憲法・行政法・民法・商法などの基本法系が土台で、判例の射程や要件効果の理解が問われます。

条文丸暗記だけでは対応しにくく、択一でも「判例の事案を変えて縦横に問う」タイプが多いのが特徴です。

どちらも通読→整理→演習→レビューのサイクルは共通ですが、社労士は「定義・数値・手続の網羅と更新管理」、行政書士は「要件の分解→当てはめの練習」の比重がやや高くなります。

学習時間の相場感は個人差が大きいものの、社労士は1,000時間前後、行政書士は800〜1,000時間程度と案内されることが多いです。

ただし、これは単純比較できません。法学系の素地がある人は行政書士の初期コストが下がり、現場で労務・社会保険の実務に触れてきた人は社労士の立ち上がりが速くなります。

重要なのは、過去問分析の精度です。直近5年を軸に、論点を「条文系・判例系・数値系・横断系」にタグ付けし、間違えた選択肢の根拠条文まで辿る「逆引き復習」を貫くと、形式が違っても取り切る力がつきます。

模試の偏差値に一喜一憂するより、間違いの原因を再現可能なメモに落とし込む方が、合格可能性に直結します。

なお、近年の社労士は合格率が一桁前半で推移する年度もあり、難関化の印象を持たれがちです。

合否は年度の出題難度と基準点調整にも影響されますから、単年の数値だけで判断するのは適切ではありません。

一次情報として各年度の実施結果は公表されており、合格率、平均点、受験者数などの推移が確認できます。

最新の全体像は公表資料で確認し、学習計画の前提をアップデートしておくと安全です。

（出典：厚生労働省「社会保険労務士試験の結果等」）

用語補足：
基準点調整…年度の難易度の偏りをならすために行われる得点調整。科目別の最低点ラインは告示・公表に従い、受験年の試験案内で最新の取扱いを確認する必要があります。

需要と将来性を見極める

社会構造の変化は、士業の役割と案件の質量に直接影響します。

日本では少子高齢化、雇用の多様化、労働時間の適正化、安全衛生、個人情報保護、内部統制、人的資本の情報開示など、人と組織に関する法令対応が拡大・複雑化してきました。

社労士は、就業規則・賃金制度・同一労働同一賃金・ハラスメント防止措置・労働時間管理・安全衛生体制といった領域で、制度設計から運用、監査、是正までの要請が増える傾向が指摘されています。

働き方の選択肢が増えるほど、労使双方のリスク管理とルール整備のニーズは高まるため、企業規模を問わず相談は発生しやすいと言えます。

行政書士は、許認可行政のデジタル化・オンライン化の流れの中で、様式や手順の更新が続いています。

建設業や運送業、産業廃棄物、飲食などの生活・インフラ系の産業では、新設・更新・業種追加が常に発生し、地方でも安定した需要が見込めます。

相続・遺言、各種契約・議事録、会社法務文書の作成、外国人の在留関連など、人のライフイベントと企業活動の両面で書類ニーズは途切れにくく、景気循環の影響を受けつつも長期的には一定のボリュームが保たれています。

さらに、特定行政書士の制度により、不服申立て手続の代理までカバーできる体制が整い、予防法務→争訟前段の対応という連続線上での支援が可能になってきました。

将来性の鍵は、法改正・ガイドライン改定のスピードに追随し、業務を標準化・自動化・可視化できるかどうかです。

社労士では、労務DX（労務領域のデジタル改革）として、勤怠・給与・人事評価・年末調整・算定・月変などのデータ連携を設計し、顧問先の運用に落とす支援が注目されています。

これは単なるツール導入ではなく、規程・フロー・権限設計まで含む業務要件定義に近い仕事で、コンサルティングの比率が上がります。

行政書士側でも、申請データのスキーマ化、必要添付書類のチェックリスト化、差戻し理由のナレッジ化により、案件の回転率と品質の両立が図れます。

両資格を併せ持つことで、会社設立や事業拡大のタイミングにワンストップで乗り込めるため、リード獲得の効率が高まるのも実務上の利点です。

需要の中期見通しを立てる際は、①人口動態（高齢化率・労働参加率）、②産業構造（地域の主要産業の更新需要）、③制度改正のロードマップ（ガイドライン・告示の改定予定）、④デジタル化の進捗（オンライン申請の範囲拡大）を軸に、地域×産業×制度の交点で狙いを定めると効果的です。

ダブルライセンスはこれらの交点で価値を出しやすい配置にあります。

用語補足：
人的資本開示…企業が人材育成やエンゲージメント、スキル形成などの情報を投資家向けに開示する動き。労務データの整備と指標の可視化支援は社労士の新たな役割として期待されます。

社労士より行政書士の方が難しいですか？

この問いは毎年多くの受験者が気にするポイントですが、単純に「どちらが上か」を決めるのは現実的ではありません。

難しさの感じ方は、出題領域との親和性で変わります。

法学の基礎がある人は行政書士の立ち上がりが速くなりやすく、実務で社会保険や労務手続に触れてきた人は社労士の理解が進みやすいという具合です。

そのうえで客観指標を見れば、直近の合格率では社労士が一桁台、行政書士は一桁後半〜一割強の年が多く、数値だけなら社労士の方が厳しめに映ります。

ただし、社労士は科目別基準点が落とし穴になりやすく、行政書士は記述式で差がつく設計という、性質の差に注意が必要です。

受験戦略としては、まず得点の土台づくりを優先します。

社労士では労一・社一（一般常識）や健保・厚年・国年などでの基準点割れ対策を徹底し、条文・定義・図表で「覚えるべき数値」を明確化します。

行政書士では、行政法・民法の条文知識を骨格に、判例の事案と結論をセットでストックし、記述式は「設問の射程を短くする」（争点を一つに絞る、冗長な表現を避ける）訓練を繰り返します。

いずれも、過去問→解説→根拠条文の三段復習で理解を固定するのが有効です。

また、時間資源の配分も合否を左右します。

社労士は「分野横断の暗記」と「基準点死守」の二兎を追う必要があるため、得点効率の低い細目に深入りし過ぎないルールを決めておくと迷いが減ります。

行政書士は、択一の安定得点で土台を作り、記述で10〜20点を確実に拾う練習を積み上げるのが現実的です。

模試の点数は気になりますが、模試は弱点の発見装置と位置づけ、復習に9割の時間を割く方が効果的です。

試験直前は、社労士は法改正と数値の総点検、行政書士は頻出の行政手続・取消訴訟・国家賠償・民法総則から債権各論までの要件整理をコンパクトに回すと安定します。

合格率や基準点は年度で変動します。

最終判断は必ず当該年度の試験案内・実施結果で確認してください。情報の更新を見落とすと、古い要件を前提に学習計画を組んでしまうリスクがあります。

社労士＆行政書士はホントに最強？

「最強」という言葉は人によって解釈が異なります。

士業で何を最も重視するかによって答えが変わるため、単純な序列をつけることはできません。

ここでは「収益の安定性」「案件単価」「業務領域の広さ」「将来性」の4つの観点から整理します。

まず収益の安定性では、社労士が優位です。

企業や社会福祉法人などの顧問契約を継続的に結び、月額フィーで売上を積み上げるモデルが主流だからです。

相談対応や手続代行、就業規則の更新など、長期的に発生し続ける業務が多いため、契約の維持ができれば景気変動にも比較的強い傾向があります。

次に案件単価では行政書士に軍配が上がる場合があります。

建設業や運送業の許認可、入管関連の在留資格申請、相続関連文書などは1件あたりの報酬が数万円から十数万円規模に上る例も多く、短期間で売上を立てやすい特徴があります。

ただし単発案件中心のため、受任が途絶えると収入が変動しやすいリスクもあります。

業務領域の広さという点では、ダブルライセンスが圧倒的に優位です。

企業の新規設立から許認可取得、就業規則整備、助成金申請、労務体制の監査・改善までワンストップで提供できるため、相談の窓口を一本化したい中小企業やスタートアップにとっては極めて利便性が高いでしょう。

顧問型と単発高単価型の双方を取り込み、集客力・案件単価・継続性の総合スコアを高められる点が大きな強みです。

将来性という観点では、どちらの資格も法改正・デジタル化・少子高齢化という社会変化への適応がカギとなります。

社労士は人事労務DXや人的資本開示への対応が新たな市場を広げつつあり、行政書士は行政手続のオンライン化と相続・国際関連業務が堅調です。

地域特性や産業構造によって収益機会の濃淡は変わるため、自身がサービスを提供するエリアの産業分布を見極めることが重要です。

総合的に見ると、企業領域に特化したい人は社労士、案件ごとに高単価を狙いたい人は行政書士、幅広い相談を一手に引き受けたい人はダブルライセンスが向いています。

いずれも顧客の課題解決に直結する分野を選び、強みを伸ばすことで競争優位が高まります。

評価軸	社労士	行政書士	ダブルライセンス
収益の安定性	顧問契約で積み上げ型	単発案件中心で波がある	顧問＋単発を組合せ安定性向上
案件単価	中〜低単価が多い	高単価案件も狙える	顧問で安定＋単発で高単価
将来性	労務DX・人的資本開示で成長領域	相続・国際・行政手続の需要が継続	双方の新領域を包括
総合力	労務分野に特化し強み	幅広い書類業務に強み	企業法務・労務の一元化が可能

社労士＆行政書士最強説～今後の展望

今後の動向と取得の順番

制度や市場の変化を見越した計画的な資格取得は、キャリア形成において重要な戦略となります。

社労士は受験資格として学歴や実務経験が求められますが、例外として行政書士など特定の国家資格合格者はその要件を満たせるとされています。

学歴要件に不安がある人や最短で実務資格を得たい人は、先に行政書士を取得→その合格実績で社労士受験資格を満たすというルートが効率的です。

公式案内は社会保険労務士試験オフィシャルサイトに詳細が掲載されています。

今後の制度トレンドとしては、政府のデジタル社会形成計画に基づき、行政手続のオンライン化とデータ連携の拡大が続く見込みです。

行政書士はこれに対応する新手続や新業務が増える一方、社労士は労働関連法の改正、人的資本情報の開示義務化、雇用調整助成金のデジタル申請など、ITと法務の知識を統合したコンサルティング需要が伸びると予想されます。

アップデート対応力を備えることが、長期的な活躍の鍵となるでしょう。

取得の順番を決める際には、自分の現状の学習リソース、実務経験、開業時期の計画を踏まえて判断する必要があります。

法律の基礎が未習得であれば行政書士を先に学ぶことで法令理解が深まり、その後の社労士学習を効率化できます。

逆に企業で人事労務分野の実務経験が豊富なら、その知識を活かして社労士先行も選択肢となります。

総じて、受験資格を満たすための合理性と、将来取り組みたい業務領域の優先度を天秤にかけて順番を決定することが推奨されます。

社労士と行政書士のダブルライセンスを取得するとどうなる？

両資格を持つことで、企業支援の入口から出口までを一貫して提供できる点が大きな魅力です。

具体的には、会社設立の登記前後のフェーズで行政書士が許認可手続を担当し、その後の雇用契約締結や就業規則整備、社会保険加入などを社労士がフォローすることで、顧客にとっての窓口を一本化できます。

これにより、手続の二度手間や情報連携のロスを減らし、顧客満足度の向上と案件の継続性が期待されます。

行政書士会の公式案内では、特定行政書士は不服申立て手続の代理権限を持つことが明記されています。

この権限は、補助金や許認可に関連した行政処分への異議申立てに対応する際に重要な役割を果たします。

一方で社労士は、労働分野でのADR（裁判外紛争解決手続）に関与できる範囲を持ち、労務上のトラブル未然防止や改善にも強みがあります。

この二つを組み合わせると、許認可取得→労務管理→是正対応→再申請までの業務サイクルを一括で引き受けることが可能になります。

さらに、近年は企業がサステナビリティやコンプライアンスへの対応を強化しており、就業環境の適正化や助成金活用を支援するニーズが高まっています。

ダブルライセンス保有者は、経営課題と法令遵守を橋渡しする存在として重宝されるケースが増えています。

実務面では、労務監査で指摘された事項を行政書士が申請書類へ反映したり、許認可審査で求められた体制改善を社労士が就業規則や労務制度に落とし込んだりと、両資格の連携が即時性を生む事例が多くあります。

社労士は無理ゲーですか？

インターネット上では「社労士試験は無理ゲーではないか」という声が少なくありません。

確かに、直近の第57回試験の合格率は5.5％（出典：厚生労働省『社会保険労務士試験結果』）と低水準であり、難関国家資格であることは間違いありません。

しかし合格者は毎年一定数存在し、正しい学習計画を立てれば十分に突破が可能です。

社労士試験の難しさは、単に出題範囲が広いだけでなく、科目別基準点制度が採用されている点にあります。

これは総得点だけでなく、各科目で最低点を下回ると不合格になる仕組みです。

特定科目の苦手を放置できないため、得意分野で高得点を取っても合否が左右される厳しさがあります。一方、記述式がないため、択一問題や選択問題に集中した戦略的な学習がしやすい面もあります。

学習負担を軽減するための制度として、公務員特例や免除指定講習による一部科目免除があります（詳細は社労士試験免除資格者案内参照）。

これらを活用できる人は、受験科目を減らすことで学習負荷を抑えることが可能です。

効果的な学習戦略としては、まず過去10年分の過去問を解き、頻出論点や出題パターンを徹底的に把握することが重要です。

特に法改正や数値問題、時効関連は得点源になりやすいため、短期間で反復できる暗記ツールを用いると効果的です。

直前期は弱点科目を重点的に復習し、科目別基準点割れを防ぐ学習配分が鍵となります。

また、働きながら学習する受験生も多いため、効率的な時間管理が必須です。

市販テキストのみに頼らず、通勤時間にオンライン講座を活用したり、週末に模試を受けて実戦感覚を養うなど、限られた時間を最大限活かす工夫が合格への近道です。

注意点として、試験範囲や配点基準は法改正や告示により変わることがあります。

出願前や学習中は必ず最新の公式情報を確認してください（社労士試験オフィシャルサイト）。

難易度は高いものの、戦略次第で合格は十分可能です。

「無理ゲー」というより、計画的かつ継続的な学習が求められる試験といえるでしょう。

結論と次の一歩～社労士＆行政書士最強説まとめ

社労士と行政書士はそれぞれ独自の強みを持ち、どちらが「最強」かは個人の目的やキャリアビジョンによって変わります。以下に最終的な整理をまとめます。

• 社労士は顧問契約型の業務が中心で、毎月安定した収入を積み上げられるのが魅力。
• 行政書士は許認可申請や契約書作成など単発高単価の案件を狙いやすい。
• ダブルライセンスは集客力と案件継続率の両面で優位になりやすく、ワンストップサービスの提供が可能。
• 試験の難易度は社労士の方が高めで、特に科目別基準点対策が必要。
• 行政書士は法令全般を広く学ぶため、基礎法学習としても有効であり、社労士の受験資格にも活用できる。
• 取得順序は受験資格の観点から行政書士→社労士の流れが合理的。
• 免除制度を活用することで学習負担を減らせる可能性がある。
• 両資格ともデジタル化・法令対応強化の流れで需要が継続する見込み。
• 地域特性や業務分野によって収益性が変動するため、市場分析が重要。
• 独立開業と企業勤務では収入構造が大きく異なるため、キャリア選択時に留意すべき。

次の一歩としては、まず自身のキャリアプランと目標年収、提供したいサービス領域を明確にすることが不可欠です。

そのうえで受験資格を確認し、必要であれば先に行政書士の取得を検討します。

さらに、学習計画を立てる際には最新の法改正情報や公式ガイドラインを必ず参照し、無駄のない効率的な準備を進めましょう。

資格はあくまでスタート地点です。実務経験・専門分野の深堀り・営業導線の構築を組み合わせてこそ、資格を「最強の武器」に変えることができます。

最終的な「最強」の答えは一律ではなく、あなたの目指すキャリアと提供価値に最も合致する選択が最強です。

以上で、社労士と行政書士の比較・活用法・学習戦略を網羅的に解説しました。本記事が、あなたの資格選びとキャリア設計の確かな指針となれば幸いです。

監修者プロフィール

管理人は宅地建物取引士・行政書士・社会保険労務士・中小企業診断士をはじめ10資格以上を保有し、10年にわたり社会保険労務士事務所として活動してきました。

現在は資格取得ノウハウや実務経験をもとにを執筆・監修し、受験生へ最新の学習法とキャリア情報を発信。

自身の体験をもとに“リアルで役立つ資格情報”をお届けします。

【資格取得歴】
2008年2月　簿記2級
2008年10月　販売士2級
2009年12月　宅建士
2010年11月　社会保険労務士
2011年1月　行政書士
2011年3月　FP2級
2011年12月　中小企業診断士
2012年7月　世界遺産検定1級
2013年4月　年金アドバイザー2級
2014年3月　特定社会保険労務士

【実務歴】
2012年10月中小企業診断士登録
2013年4月社会保険労務士開業
以後10年間社会保険労務士として活動し現在はWebサイト運営に専念

監修者