社会保険労務士の試験は「理解力ではなく記憶力の試験」であるということがよく言われます。
それは、試験が全てマークシート方式で行われ、記述式の回答がある試験と違い、全ての問題が「知っていれば答えられる」ためです。
とはいえ試験合格に必要な知識は膨大であり、その全てを真正面から全てを暗記してしまおうとしても、普通の人間にはまず不可能です。
したがって、「暗記」に対してもある種の戦略を持って取り組む必要があります。
記事のポイント4つ
- 社労士試験における暗記の重要性と特徴
- 効率的な暗記術の具体例と実践方法
- 暗記を助ける便利なツールやアプリの活用
- 暗記に関する悩みを解消するコツと体験談
社労士試験における暗記の重要性

社労士試験は「暗記ゲー」とも言われるほど、知識を記憶することが求められる試験です。
しかし、膨大な範囲をすべて暗記するのは不可能に近く、戦略的な学習が必要です。
ここでは、効率よく記憶に定着させるための基本的な考え方を解説します。
まずは暗記を意識しないことも必要
試験本番までの日数にもよりますが、標準的な学習期間である1年程度を想定した場合、最初の段階では暗記のことは考えなくてもよいと思います。
テキストや問題集を繰り返すうちに、自然と覚えてしまう項目も数多くあるからです。
また、そもそも全く条文や法律の理解をしないままで、むりやり暗記をしても頭に残らないように人間の頭はできています。
その上で試験が近づいてきた段階で、どうしても頭に入らない部分だけを「暗記」するというイメージです。
暗記はいつから始めるべきか?
勉強初期の段階ではテキストや問題集を繰り返し解き、知識を自然に身につけることを目指しましょう。
その後、試験の約5~6か月前から暗記を意識し始め、徐々に暗記の比重を高めるのが効果的です。
参考:管理人の体験談
僕の場合はトータルの勉強期間が10カ月くらいしか取れませんでしたが、試験3カ月前くらいから暗記を取り入れました。
しかし結果的に全然間に合わず、試験1週間前から夏休みが取れたので、起きてる時間の全てを漏れている知識の暗記に投入するというバタバタぶりでしたが、運良くギリギリ合格できました。
試験当日のスタート直前まで、雇用保険の受給可能日数を紙に書きまくっていたのも今となってはいい思い出です(笑)。
あまりに早く暗記したものは試験までに忘れてしまいますし、直前すぎると間に合わない部分がでてきますので、やはり試験の5~6カ月前から暗記を意識し始め、試験が近づくにつれ段々とその比率を高めていくことがおすすめです。
暗記のステップ
試験に向けた初期段階では「頻出ポイント」のチェックに集中します。具体的には、以下のステップを取り入れると効果的です。
ステップ1: 初回の読み込み
- 目的: 全体像を把握し、重要なポイントを洗い出す。
- 方法: テキスト全体を読み、覚えるべき項目にマーカーを引く。この際、法律ごとに色を分けると後々の復習が楽になります。
- 具体例: 労働基準法では「休憩時間」「割増賃金」の項目に赤マーカーを使用し、他の部分は青マーカーでチェック。
ステップ2: 頻出テーマの絞り込み
- 目的: 出題頻度が高い分野に集中する。
- 方法: 過去問を分析し、同じテーマが繰り返し問われている箇所を特定する。
- 具体例: 健康保険の「高額療養費制度」や労災保険の「通勤災害」の項目は頻出のため、特に重点的に暗記。
ステップ3: 集中暗記
- 目的: 試験直前に確実に得点できる項目を仕上げる。
- 方法: 暗記カードやアプリを活用し、短時間で繰り返し復習する。
- 具体例: 雇用保険の「給付日数」や年金保険の「支給開始年齢」をカード化して反復学習。
社労士試験の「覚えること多すぎ問題」を克服する
社労士試験の範囲は膨大で、その情報量に圧倒されてしまうことが多いです。
しかし、効率的な学習計画を立てることで、「覚えることが多すぎる」という問題を解決することが可能です。以下に具体的な克服方法を箇条書きで解説します。
1. 重要度に応じた優先順位を設定
- Aランク: 出題頻度が高く合否に直結する重要項目
例: 労働基準法の「労働時間」「休憩」「休日」など - Bランク: 出題頻度が中程度で補足的に覚えるべき項目
例: 労災保険法の「通勤災害」や「保険料負担の基準」 - Cランク: 出題頻度が低く、学習の優先度が低い項目
例: 雇用保険法の「高年齢被保険者給付」など
学習のポイント: Aランク項目を最優先で学習し、BランクとCランクは余裕がある場合に取り組む。
2. 学習時間の配分を工夫
1日の学習時間を以下の割合で割り振ります:
- 70%: Aランク(最重要項目)
- 20%: Bランク(中程度の重要度)
- 10%: Cランク(低頻度項目)
具体例:
- 1日5時間の学習時間がある場合、3.5時間は労働基準法や労働安全衛生法などの頻出項目に、1時間を中程度項目、残り30分を低頻度項目に割り当てます。
3. テキストの分割とスケジュール化
- テキストを分割し、章ごとに学習範囲を設定する。
例:- 1週目: 労働基準法
- 2週目: 労働安全衛生法
- 3週目: 労災保険法
- 4週目: 健康保険法
- 各週ごとに「読み込み」「問題演習」「復習」の3ステップを繰り返す。
4. 過去問の活用
- 過去5年分の問題を解く
出題傾向を把握し、頻出テーマをリストアップ。
例: 健康保険法の「高額療養費制度」や労災保険法の「給付内容」は特に重点的に取り組む。 - 間違えた問題を記録
自分の弱点を把握し、暗記カードやアプリを活用して復習。
5. 定期的な復習と間隔反復法の活用
- 学習後1日目、1週間後、1か月後に復習する。
この「間隔反復法」によって記憶が定着しやすくなる。 - 具体例: 労働基準法の「休憩時間規定」を1日目に学び、1週間後に復習。その後1か月後に再度確認する。
6. 隙間時間の活用
- 暗記カードやアプリを使う
通勤中や待ち時間を活用して短時間で学習する。
例: スマホで「Anki」アプリを使い、労災保険の支給内容を復習。 - 録音して聞く
自分の声でテキストを読み上げ、移動中に聞き流す。
社労士試験の「覚えること多すぎ問題」は、全てを暗記しようとするのではなく、重要度に応じた学習と戦略的なスケジュール管理で解決できます。
優先順位を明確にし、隙間時間を活用することで、効率的な学習が可能になります。
計画的に取り組むことで、不安を軽減し合格への道を切り開きましょう。
社労士試験の暗記法を具体的に解説

効率よく記憶するためのテクニックとツールを紹介します。
これらを活用することで、暗記の負担を軽減できます。
五感を活用した暗記法
単にテキストの暗記したい箇所を繰り返し読むだけでは、効率の良い暗記はできませんし、何より苦痛です。
しかしそこに視覚・聴覚・触覚を組み合わせることで、記憶の定着率を高め、効率的な学習が可能になります。以下に具体的な方法を解説します。
1. 視覚を活用する
視覚的な刺激を取り入れることで、情報を記憶に残りやすくします。
- マーカーで色分け: 暗記したい箇所をカラーペンで重要度ごとに分ける。例えば、青は頻出事項、赤は必須事項として分類。カラフルにすることで、記憶が定着しやすくなります。
- マインドマップ: テキストの内容を図式化し、関連性を視覚的に整理。労災保険の支給項目を中心に、「通勤災害」「業務災害」などを枝分かれさせて描くと効果的です。
2. 聴覚を活用する
聴覚を取り入れると、視覚だけで学ぶよりも効率が向上します。
- 音読と録音: 暗記したい部分を音読して録音し、通勤中や休憩中に聞く。例えば、労働基準法の条文を繰り返し聞き流すことで、耳からも記憶を補強できます。
- リズムに乗せる: 数字や順番を含む項目はリズムに合わせて覚える。例えば、「65歳、60歳」といった年金支給開始年齢を簡単なメロディに乗せると記憶に残りやすくなります。
3. 触覚を活用する
触覚を利用することで、記憶プロセスをさらに強化します。
- 暗記カードの作成: 重要な用語や条文をカードに書き写し、手で操作しながら何度も見直します。手を動かすことで、記憶に定着しやすくなります。
- 線を引く作業: テキストに線を引く動作も触覚を活用した学習法の一つ。線を引きながら読むことで、単なる読み流しより深く記憶に残ります。
五感を活用することで、単調な暗記作業をより楽しく、効率的に進められます。これらの方法を組み合わせて、自分に合った学習スタイルを見つけてください。
暗記アプリを活用する
社労士試験の効率的な学習には、暗記アプリを活用するのがおすすめです。
特に膨大な情報を短期間で記憶する必要がある場合、アプリを使った学習は大きな効果を発揮します。
以下に、具体的な活用方法とアプリの利点を解説します。
1. 隙間時間を有効活用
暗記アプリの最大の利点は、スマートフォンで手軽に利用できる点です。
通勤や昼休みなどの隙間時間を使い、効率的に学習を進められます。
例えば、通勤電車内で労働基準法や雇用保険法の頻出項目を短時間で繰り返し確認することで、短期記憶を長期記憶に変えることができます。
2. 自動的な復習サイクル
多くの暗記アプリには「間隔反復機能」が搭載されており、記憶の薄れやすいタイミングで復習を促してくれます。これにより、忘れやすい項目を重点的に復習し、効率的に記憶を定着させることができます。
例えば、社労士試験特有の難解な用語や法律条文も、この機能を活用すれば効果的に覚えられます。
3. カスタマイズ可能な学習
暗記アプリでは、自分専用のカードや問題集を作成できます。
特に「Anki」や「Quizlet」のようなアプリは、テキストや画像を組み合わせたカードを自由に作れるため、社労士試験のような専門知識にも対応可能です。
例えば、労災保険の支給基準をカードにまとめ、画像や色分けを加えることで、視覚的に学びやすくすることができます。
4. 学習進捗の把握
アプリを使うことで、自分の学習進捗を簡単に確認できます。
覚えた項目や復習が必要な項目が一目でわかるため、学習計画を立てやすくなります。特に試験直前には、重点的に復習すべき項目をリスト化しておくと効率的です。
暗記アプリは、効率的な学習を実現するための強力なツールです。
隙間時間の活用や復習の効率化に役立てながら、自分に合った学習スタイルを確立してください。アプリを最大限に活用することで、合格への道が一歩近づきます。
語呂合わせで楽しく記憶語呂合わせで楽しく記憶
べたな方法ですが、「語呂合わせ」も効果があります。
語呂合わせは、覚えにくい情報をリズミカルで簡単なフレーズに変換し、記憶を助ける有効なテクニックです。
語呂合わせの活用ポイント
- 数字や条件の暗記に最適
・労働基準法第35条の「休日の付与」を「サイコー(35条)の休み!」と覚えることで、条文内容が頭に残りやすくなります。
・健康保険の高額療養費制度の自己負担額を「サンゴの7割(3割負担)」と語呂にすることで、覚えやすさが向上します。 - 関連性のあるフレーズで記憶
自分の生活に関連づけるとさらに覚えやすくなります。例えば、介護休業法は「家(いえ)で休む」と関連付けると記憶が定着しやすいです。
語呂合わせを作るコツ
- シンプルで覚えやすいフレーズを作る
語呂合わせは短く、簡潔なものほど効果的です。複雑な語呂合わせは逆に覚えにくくなるため、無理のない範囲で作成しましょう。 - 市販の語呂合わせ本を活用
社労士試験用に特化した語呂合わせ本も出版されていますが、これを参考にしつつ、自分なりにアレンジを加えるとさらに記憶しやすくなります。
効率的に語呂合わせを使うコツ
- 覚えにくい箇所だけに絞る
試験範囲のすべてを語呂合わせで覚えようとすると非効率です。特に覚えにくい部分や数字が絡む項目だけに活用するのがおすすめです。 - 繰り返し確認で記憶を強化
語呂合わせで覚えた内容を、テキストや過去問を使って何度も復習しましょう。例えば、過去問で「語呂合わせを思い出しながら解く」というプロセスを繰り返すと、より記憶が定着します。
語呂合わせは、社労士試験の膨大な暗記量に挑む際に心強いツールです。
重要なポイントを楽しく、効率的に覚えることができます。
ただ、語呂合わせでの暗記はなかなか、分量をこなすことはできないので、あくまでも補助的な方法として勉強に煮詰まったときなどの気分転換がてらでの活用がおすすめです。
社労士試験の暗記を極める方法とは?まとめ
社会保険労務士試験に合格する上でどうしてもある程度の「暗記」は避けて通ることはできません。
だからこそ、楽しく効率的に取り組みたいものですね。
この記事で紹介した方法を使って参考に自分なりの暗記術を編み出してみていただければと思います。