社会保険労務士と行政書士

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社労士と行政書士のダブルライセンスが多い理由

社会保険労務士に加えて取得されることが多い資格に行政書士があります。

ひとつの理由としては、社会保険労務士の受験資格のひとつである大卒以上の学歴を満たさない場合でも、行政書士の資格を持っていれば受験が可能となるためです。

ふたつ目の理由としては、ダブルライセンスを取ることによって受任できる業務の幅を増やすことを目的とした取得です。

社会保険労務士の業務は企業と顧問契約を結び、社会保険の手続きや労務管理のアドバイスを行うことが一般的な仕事内容となります。

それに対し行政書士は、会社設立や役所に提出する許認可申請書類等の作成・提出などをスポットで受任することが多く、社会保険労務士の業務の関連業務としての受任を目指すという考え方です。

歴史的なつながりもある

また、そもそも社会保険労務士の資格自体が、1968年に「社会保険労務士法」が制定されることにより、それまで行政書士の職域に含まれていた社会保険分野の手続きをより専門的に行う資格として誕生したという経緯があります。

この時、経過措置として約9000名の行政書士が試験を受けることなく社会保険労務士の資格を得ています。

なお、専門的な話になりますが、この特例で資格を得た社労士はその後に社労士の独占業務に追加された提出代行・事務代理・あっせんは行うことができず、当時行政書士に認められていた使者としての提出のみを行うことができます。

試験科目は重複なし

難易度が近い法律系の国家資格として、よく比較の対象となるふたつの資格ではありますが、試験科目は全く異なります。

社労士の試験科目は資格の誕生の経緯もあり、以下のように社会保険・労務の分野に特化した試験科目となったいます。

  • 労働基準法及び労働安全衛生法
  • 労働者災害補償保険法
  • 雇用保険法
  • 労務管理その他の労働に関する一般常識
  • 社会保険に関する一般常識
  • 健康保険法
  • 厚生年金保険法
  • 国民年金法

これに対し行政書士は以下のように他の士業の独占業務を除く幅広い分野が対象となるため、憲法、民法など法律系科目の基本となる科目が多くを占めます。

  • 憲法
  • 民法
  • 行政法(行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法を中心とする)、
  • 商法(会社法)
  • 基礎法学
  • 行政書士の業務に関連する一般知識等
  • 政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解

なお、社会保険労務士の試験科目が専門分野に偏りすぎているため、民法を試験科目に入れるべきだという議論が何年も前からあります。

実際、社会保険労務士が個別労働紛争のあっせん業務を行うために取得する必要のある「特定社会保険労務士」の研修では民法の研修に多くの時間が割かれています。

専門化が進む近年ではダブルライセンスでの受任は難しくなりつつある

このように、いろいろな面で関わりのある社会保険労務士と行政書士の資格ですが、それぞれの資格だけで考えても業務の細分化、専門化が進んでいるため、ダブルライセンスの看板を掲げていたとしても、いずれかの業務に特化していく場合が多いのが現状です。

とはいえどちらの資格も一旦合格してしまえば、資格の更新要件もなく一生使える資格ですから、余裕があればチャレンジしてもいいかもしれませんね。